日頃の家事のストレス、寂しさもあったのでしょう。私は携帯電話の出会い系サイトを利用するようになってしまいました。
携帯電話の向こうの男性は、皆私に優しく、一人の女性として扱ってくれました。女としてより、妻、母として扱われる日々には感じることの無い喜びに夢中になってしまったんです。
そんな数人のメル友の中で、N沢さんという男性に一番心を許すようになっていました。さり気ない一言に優しさを感じ、日常の愚痴や悩みも相談しあえる仲になっていました。
N沢さんも奥さんがいることを事前に聞いていましたので、他の独身男性よりは安心感があったのかもしれません。
そんなメールでのやりとりが続いていたある日、N沢さんから「一度お会いして食事でも行きませんか?」と誘われました。
この言葉に躊躇はしたものの、N沢さんに逢うことを意識していたことも事実で、少し悩んだ振りをしながらも、OKしました。
当日は朝から落ち着けすにソワソワしてしまい、夫にも子供にも変な顔で見られてました。楽しみで仕方なかったんですね。
待ち合わせのドキドキは最近味わうことの無かった感情でした。どことなく懐かしい感じで。
現れたN沢さん、照れながら手を振る笑顔が想像していた通りの方で緊張も増してしまい。でも、楽しい時間を過ごせました。
本当に心を許してしまったんでしょう。少しだけ飲んだシャンパンで酔ってしまい、そのまま男女の関係になってしまったんです。憧れていたN沢さんが相手でしたから、後悔なんてありませんでした。
ただ、私にもN沢さんにも家族がある。悩んだ末に今回を最後にしようと告げ、別れました。
N沢さんからその後も逢いたいとメールが来ましたが、苦しい胸を押さえ、返信することは止めました。
電話も数回来ましたが、一切出ないことに決めました。
暫くすると、自宅電話に無言電話がかかってくるようになりました。時間帯関係なくかかってくるのです。あまりに続くので、電話機をナンバーディスプレイの電話に交換しました。
すると早速無言電話。表示されている番号を見、驚きました。N沢さんの番号なのです。どうやって自宅の番号を知ったんだろう。電話帳にも載せてないのに。
N沢さんの番号が表示される無言電話は続きました。非通知でかかってくるいたずら電話と違い、恐怖が倍増しました。あの日のこと、夫や子供にばらされたらどうしよう。私は彼の携帯電話番号とメールアドレスしか知らない。
決死の覚悟で、翌日N沢さんに電話しました。どういうつもりで電話してきているのかと。
「あなたのことが忘れられない。もう一度会ってほしい」
そう繰り返すだけで、やめて欲しいと必死にお願いする私の言葉なんて聞いてくれませんでした。
夫に頼み、電話番号を変えてもらったりもしました。でも1週間もするとまた電話が来るんです。「N沢」とだけ書かれたFAXを送信してくることもありました。
彼からのいつ襲ってくるか判らない攻撃に怯えて暮らす日々、そんな生活に終止符をうつことができるのでしょうか。
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