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探偵事件簿:
企業信用調査相談例01

「お待たせ社長」31歳男性

我が家は親子で成型工場を営んでおります。親父はもともとメーカーの社員だったのですが、私が小学生の頃会社を辞め、小さな工場を作りました。
不景気な時期もありましたが、最近は車の部品や携帯電話の部品などの仕事もあり、パートさんを雇う程度の忙しさです。
一見、順風満帆そうに見えるのですが、いつも見えない不安に襲われていました。といいますのも、取引先の数が少ないので、一社でも取引が無くなれば大打撃はさけられないのです。

その数少ない取引先の中でも最も古くから付き合いがあり、仕事量も多いT社ですが、ここのS田社長、もともとメーカーに勤務時代の父親の上司で何かと頭が上がりません。
仕事の量が多いとはいえ、入金はいつも遅れ気味でマイペースで上から目線のS田社長は母や私には良い印象はありませんでした。

そのT社ですが、最近は利益が少ない仕事が多くなり、家族でも頭を抱えていました。
ある日T社からの入金が遅れ、手形を落とせなくなる事態がおきました。母が兄弟親戚をに頭を下げ何とかなりましたが、その姿はとても見ていられるものではなく、それを期に親戚づきあいもギクシャクするようになりました。
母もさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、その日の夜は父と言い争いになってました。結局、翌日父がS田社長に催促をすることになったのですが、相変わらずのマイペースで入金を待つ事になりました。

その後も入金の約束は殆ど守られる事はなく、不安はより一層大きなものとなっていきました。
ところがあるきっかけからS田社長の恐るべき本性を知る事になったのです。

先月、友人の結婚式に行ったときのことでした。式が終わり会場のホテルのロビーで友人と飲んでいると、偶然S田社長が若い女と現れたのです。
S田はこちらに気づく事も無く、酔っているのかいつも以上に良く喋っていました。私は友人との話よりもS田の話に耳を傾けました。
どうやら女の誕生日らしく、贈り物をしているようでした。プレゼントを受け取った女が「こんな高いもの大丈夫なの?」と聞くと、S田の口から驚くべき言葉が飛び出したのです。
「昔の部下がやっている会社があって、ただ同然で仕事引き受けてくれるから儲かって仕方ないんだよ。」耳を疑いました。間違いなく我が家のことです。
私は一気に酔いが醒めました。家に帰ってこのことを話すと、さすがの父も憤りを抑えきれず翌朝S田社長に直談判に向かいました。
結局、T社との取引も無くなりパートさんにも辞めていただき、私はバイト、母は内職をしながら何とか工場再建を目指して頑張っています。
T社からの仕事をもっと早く引き上げていれば、ここまでひどい状態にはならなかったと思うと悔しくて仕方がありません。

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